
世の中にないものを
生み出し、
持続的な
イノベーションを。
2023年2月、EIDAIより洗面脱衣室やランドリールーム等に設置できる収納「乾太くん専用収納ユニット」がリリースされた。「乾太くん」(※)は、リンナイ株式会社製の家庭用ガス衣類乾燥機で、30年以上売れ続けているロングセラー製品である。それまではスチール製のラックが主流だったが、サニタリー空間にインテリア性を求めるニーズの高まりもあり、EIDAIでは木質素材を用い、新たな専用収納ユニットを開発することになったのだった。
※「乾太くん」は東京ガス株式会社の登録商標
MEMBER
-
プロジェクトリーダー
O.H
内装システム事業部
(特命担当部長)
1991年入社 -
営業担当
S.M
東京特販営業部
営業開発課
2014年入社 -
営業担当
Y.M
東京特販営業部
営業開発課
2018年入社 -
開発担当
S.M
内装システム事業部
商品部
収納商品開発課
2021年入社
※所属部署・職務は取材当時

STORY01 専用の台をつくるしかない
リンナイの「乾太くん」は、家事の負担軽減や、洗濯物を外干ししないといった時代的背景もあり、年々販売数を伸ばしていた。しかし、白色のスチールラックか、もしくは造作で製作した台の上に置くしか選択肢がなく、いずれもデザインや機能、コストの面でユーザーのニーズを十分に満たしているとはいえなかった。
プロジェクトの端緒となったのは、キッチンのガスコンロに関する商談時に、リンナイの担当者がO.Hに対して発した何気ない一言だ。「『乾太くん』の売れ行きが好調なんですけど、もう少しデザインや使い勝手のいい台があったらな、と思っていまして…」。O.Hは、内装システム事業部の特命担当部長として、新製品の企画・開発から市場投入までを担っている。数々の製品を手がける中で、企画段階で頓挫してしまう案件も当然あるが、「乾太くん」専用台には大きな可能性を感じた。
「乾太くん」はガス事業者が扱う製品であり、床材や建具、システムキッチンなど、EIDAIが展開する既存の住宅設備には該当せず、販売ルートも全く違う。社内には、仮に「乾太くん」専用台が実用化にこぎ着けたとしても本当に売れるのか、と疑問視する声も少なからずあったが、実際に建築現場で「乾太くん」を設置するハウスメーカーや工務店にヒアリングしたところ、「ぜひ使ってみたい」と前向きな反応が返ってきたため、O.Hは確信を持ってプロジェクトを前に進めることにした。

ガス事業者には、ハウスメーカーや工務店の大工、あるいは設備工事会社のような複雑な組立ノウハウがない。また、洗面脱衣室やランドリールームは作業スペースが限られている。工程を簡素化し、一般の人でも取り付けができるレベルを意識して、プラスドライバー1本で組み立てられる仕様にこだわった。

STORY02 高い要求レベルを満たすために
ライフスタイルの多様化に伴い、ユーザーのニーズも多様化している。それを叶えるため日々試行錯誤しているハウスメーカーや工務店の意見をとりまとめたのが、営業担当のS.MとY.Mだ。
サイズは間口750 mm×奥行き650mmと、「乾太くん」の設置に最適なものに。身長160cm(日本人成人女性の平均身長/厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」に基づく)未満の人でも作業時の負担が少ない高さ(1,050 mm)に設計した。また、台単体ではやはり物足りない。洗濯物の仕分けや畳み作業に便利なスライドカウンター、洗濯ネットなどの洗濯用品、タオルや衣類を収納できる引き出しを標準装備した。さらに、足元に脱衣かごが置けるスペースを確保し、細部まで機能性を追求した。
お客様であるハウスメーカーや工務店の要求レベルは想像以上に高かった、とS.Mは振り返る。技術的に可能であっても、こだわればこだわるほどコストがかさみ、市場価格から乖離してしまう。希望条件をそのまま反映するのではなく、お客様がメリットを感じる代替案を提示することが重要だった。営業部門と開発部門が密に連携し、落としどころを探る。また、他社の住宅展示場やSNS等で得た情報を先方に共有し、常にベクトルを合わせることを心がけた。


お客様は建築のプロである。いくら連携しているとはいえ、先方の質問に対し毎回「開発部門に確認します」と答えていては、いずれ信頼を失う。Y.Mは自ら細かな仕様について学び、想定問答を用意するなどし、商談に臨んだ。納得のいく製品に仕上げるため、妥協は許されない。改良に改良を重ね、発売ギリギリまでブラッシュアップを続けた。

STORY03
先行投入と
ブラッシュアップ
2023年2月に発売された「乾太くん専用収納ユニット」は、機能性はもちろん、洗濯機などのランドリー家電に合わせやすいシンプルなデザインが受け、清潔感のあるホワイトの外観とも相まって、多くのユーザーから好評を得た。
2023年7月に扉とキャビネットの色柄を追加。そして翌2024年3月には、「乾太くん専用排湿管隠し」が追加されることになった。排湿管とは、「乾太くん」から放出される熱気を屋外に誘導するための管である。取り付け方向に合わせて排湿管を隠せるよう、背面抜き、左抜き、右抜き、天井抜きの、4種類のアイテムを用意。キャビネットと同じ2色をラインナップした。あらかじめ組み立てた状態で出荷され、同梱されている金具を使用すれば簡単に取り付けられる。
排湿管は約80℃の高温になるため、お客様の意見をもとに変更を繰り返し、最終的にはただ隠すだけではなく、管に直接触れられない設計に。簡単にメンテナンスできるよう、メンテ板という部材を追加した。なお、プッシュオープン式の観音扉を開けると、メンテ板で覆われた配管スペースと収納スペースに分かれおり、ストック品等を入れておくこともできる。
さらに、奥行き650mmの標準タイプに加え、「乾太くん」の9・8kgタイプを設置しても台からはみ出さないように740mmタイプが新たにリリースされた。単純に奥行きを拡張した場合、洗面脱衣室やランドリールームの狭い開口部から納入できない可能性があるため、奥行き90mmのアダプターユニットを別で取り付ける仕様になっている。
製品は発売したら終わりではなく、次々生まれる要望に応え続けなければならない。品揃えの充実や追加機能の提案が必須である。「乾太くん専用収納ユニット」を他メーカーに先駆けて市場投入したこと、そしてブラッシュアップの成果がリンナイに評価され、「推奨品一覧」の最上段にEIDAIの社名が記されることにもなった。

STORY04 暮らしそのものを提案する
2021年に新卒入社し、非住宅向けの製品開発で経験を積んだS.Mは、4年目の秋に「乾太くん専用収納ユニット1坪タイプ」のメイン開発担当に抜擢された。従来品は収納ユニットと洗濯機が横並びになるが、1坪タイプは洗濯機の上に「乾太くん」が乗る構成だ。つまり、よりスペースの限られた洗面脱衣室やランドリールームであっても、「乾太くん」の設置が可能となる。
もちろん、洗濯機のサイズはメーカーごとに異なる。できるだけたくさんの種類の洗濯機がユニット内に納まるよう、各メーカーの製品カタログをチェックし寸法設計した。他社の収納ユニットは防水パン(洗濯機を置くための受け皿で、洗濯機から出る排水や結露水を床の排水口に流す役割を担う設備)がはみ出る設計になっているケースが多いが、差別化を図る意味でも、EIDAIでは防水パンまで側板内に納まるようにしている。また、狭いスペースに設置できる設計だけでなく、狭いスペースで施工できる設計にも工夫をこらした。S.Mは試作品を組み立てる際、床にマーキングテープを貼り、その範囲内で作業ができるかを自ら検証した。

「乾太くん専用収納ユニット」自体は、決して複雑な構造ではない。しかし、単純だからこそ設計条件に際限がなく、持続的なイノベーションが求められる。営業部門と開発部門が密に連携すること、若手の視点を積極的に取り入れることは、デザイン性や機能性のさらなる向上につながるだろう。EIDAIでは、単なる住宅設備ではなく、暮らしそのものを提案している。そして、それを実現すべく、前向きに挑戦する組織風土が醸成されている。「こんなものがほしい」「こんなものがついていたら便利だな」といった日常生活に潜むささやかな希望をカタチにするため、一人ひとりが可能性の枠を広げ、目の前の仕事に真摯に向き合っている。